伝書鳩と乙女心

先日どういった経緯だったかは忘れたが、会社にて、

30〜40年前まで、新聞社とか、フィルム届けるときとかに鳩使ってたらしいよ。
という話になった。
 
え!
 
ー皆さんは、鳩のことを信用したことがありますか?
 
と、なんとなく、忘れられない恋はありますか?的な感じで己に問うたのですが、
なかった。
いや、そんなに鳩を信用に足る存在として認識していなかった。
 
伝書鳩とか、なんかこう、お願いごとレベルっていうか、
小瓶に手紙を入れて海に流すのと同じ感じだと思ってたんだけど、
全然違うんですね。
届いてほしいけど届いたら奇跡、的な感じだと思ってたんですけど、違うんですね。
打ち明けられなかった恋を空に飛ばすの、的な感じだと思ってたんですけど、冷たい水で勢い良く顔を洗ってタオルでふいて、鏡に向かって
、、ぜったいきれいになってやる。
ってつぶやく的な感じだと思ってたんですけど、違うんですね。
 
 
あの、鳩の足に写真のフィルムを入れるケースを取り付けて、
それを事件の現場から新聞社の本社まで送っていたらしいんです。
 
嗚呼そんな大事なものを!鳩に!
チャレンジャー!この、ミスターむこうみず!
 
ちょっと意味わからないですよね。
もし彼氏に、「これ、鳩で送っから」とか言ったら意味わからなすぎて
「別れる!」ってなるぐらいには意味わからない。
 
あと、フィルム入れるケースとか、つるっとしてそうでしょ。
だから運んでるとき、鳩の足のゆび(ゆび?)、超ガシってなってますよね。
超ガシって、ブルブルってなってますよね。
 
え〜ほんとに?鳩そんなにできる子?のびしろある〜?
 
と、当時、部長あたりは言ったに違いないのだ。
そこでたぶん、イメージ的にはYAWARA !の松田さん的な感じのひとが、
部長!鳩のこと、信じてやってください!俺のことは嫌いでも、鳩のことは嫌いにならないでください!
とかなんとかアツい感じで言って、鳩を飛ばしたに違いないのだ。
すごいなあ。最初に鳩信じたひとすごい。
 
一時期銀座で働いていたときに、よく日比谷公園でお昼を食べていた。
日比谷公園といえば鳩である。
あと、今はそうでもないのだけれど、私が高校生くらいのときまで、仙台のアーケード内にもなぜか鳩がたくさんいた。
したがって、なんとなく昔からぼーっと鳩を観察する機会があった。
 
昔も書いた気がするんだけど、
鳩って、自分があんなにすごい速さで首を動かしてることに気付いてなさそうですよね。
 
人間も、ふだん自然にしてる動きを意識した途端にその動きができなくなっちゃったりしますから、
鳩に至っては、自らがものすごい速度で首を動かしていることに気づいたとき、すごいパニック状態になると思うんですよね。
で、爆発しちゃうと思う。ちゅど〜んって。
だから、鳩を啓蒙させちゃいけないなって、われ首をめっちゃ速く動かしているゆえにわれ進んでいる、的なことを思ったら、
鳩はちゅど〜んってなっちゃう!!だめ!!!って、当時強く思ったことを覚えている。
 
だからね、そんな、フィルムを運ぶような存在だったなんて、知らなかった。
鳩、すでにルネッサンスだった。
 
なんだったら、日比谷公園にいる鳩の、むき出しの感情に若干引いていた。
なんて原始的な存在なんだと、思っていた。
 
太って毛艶がいい男子は、よれよれの鳩から餌を奪い、真っ白で綺麗な女子をドスドスと追いかけている。
その勝者ぶりというか、IT社長感というか、秒速で稼ぐのである。
巣は六本木ヒルズにあり。
よれよれ君は、いつまでも食べられなくて、だからずっと痩せているし毛艶もよくならない。
巣は日比谷公園である。賃貸の巣だ。なに賃貸の巣って。
女子も、真っ白なやつとかはいろんな男子に追いかけられている。
たぶん、南ちゃん的な存在なんだと思う。
真っ白なのに目の下だけ黒い女子(当時の先輩とアヴリルラビーンと命名)とかは周りとあまりつるんでいなくて、
それがまたアヴリルの魅力を高めている。
きっとものすごい年上の鳩と付き合っているに違いないのだ。
 
今思えば、原始的な感情むき出しのところに引いていたのではなくて、
あまりにも人間世界を彷彿とさせるような、その縮図っぷりが23歳ぐらいの私には辛かったのだ。
 
私たちはすぐLINEとかメールで連絡してしまうので、
電話ですら、かかってくるとちょっとどきどきしてしまう。
(ちなみに昨日久しぶりに電話が鳴ったので出たところ母親で、「阿川佐和子ふなっしーの対談を見なさい」という要件だった)
 
電話なんかやめてさ六本木で会おうよ、は、今なら、
LINEなんかやめてさ六本木で会おうよ、だ。
そんなこと言うのは勇気がいるし、言われた日にはちゅど〜んである。
 
LINEじゃ味気ないし、電話するのに勇気がいるなら、伝書鳩がいいかもしれない。
 
忘年会しよう。
 
口実だ。
伝書鳩には、乙女心が詰まっているのだ。たぶん。